Illustration by たけふじ狐
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「くっそ!」
 真夜中の集落、デデは一人外で星空を見ていた。
 憎き親父の顔、忘れたくても頭からちらついて離れなかった。
「こういう時は、楽器に夢中になるのが一番だな」
 夜空に向かって、トロンボーンを吹いた。演奏するのは、子どもの頃によく聞いていた、お母さんが好きだった曲だ。
  頭の中にある親父の顔を、母親に上書きしたい。そんな気持ちをこめて、がむしゃらに、安定しない揺れるテンポで。
 ざっざっ。
  ふと、砂を蹴るような足音が聞こえた気がした。
「だ、誰だ!」
 ほんの少し、オロオロさまの姿がよぎった。でもなんだか、雰囲気が違う。目を凝らして、デデは近づいていく。
「まさか……いやでも、そんなはず……」
 その姿は、どこか見覚えのある姿だった。つい最近じゃない。ずっとずっと昔に、一緒に暮らしていたヒトに。
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