Illustration by 竹藤狐
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「……なんだか、ふしぎなぬくもりね」
 ロココの周りに広がるのは、光もなにもない、暗闇だった。
 ただただずっと、どこまでも続く暗闇。
 それでも、怖くはなかった。体を包む何かが、ロココの心を安心させていた。
「ずっと昔に……感じた気がする」
 そのぬくもりは、ロココの母親に包まれた時の、記憶にあるものだった。
 お母さんのことは、ロココ覚えていない。でも体は、忘れずにいてくれた。
 ―――
 アタシは物心ついた時から、母親がいなかった。
「両親は、お前を置いていったんだよ」
 そう教えてくれたのは、隣に住んでたっていうじっちゃんだった。
 実は別の理由で会えなくなってて、それを隠すためにウソをついていたかもしれない。あのじっちゃん、冗談を言うのが好きだし。
 ともかくアタシの所にもうお母さんが戻ってくることはないって、察してたわ。
 そしてアタシは、孤児院に預けられた。
 中々なじめなかった私を、マリエットさんは色々と優しくしてくれた。ちょっと過保護気味だけど、それだけアタシたちのことを思ってくれてるって、証拠よね。
 でもアタシがいつも見ていたのは、外の世界。
 門限を破ってでも他の街のものが売ってる通りをぶらぶらしたり、トリキリデを登ったりした。全ては、外に出るための特訓だって、自分に言い聞かせてね。
 でもマリエットさんへの、反抗期みたいなのもあったかもね。
 マリエットさんがいなくったって、一人でも生きていけるようにって、色んなことをした。じっちゃんのお店も手伝ったりして、お金を稼いだりね。
 そして自分の手でチューバを買って、孤児院を出てった。
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