Illustration by 竹藤狐
「へっへ~ん、こっちこっち」
 たまに後ろを振り返りながら、カラットはポメに向かって手を振った。ポメはずっと、走っている。走れど走れど、カラットの方がすばしっこくて、追いつける気がしなかった。
 カラットのしっぽはまるで、ポメをあざ笑うようにゆらゆら揺れていた。
「おいおイ、あんなガキにも追いつけねぇのカ?」
 いやみったらしいフォルの声が、耳元で響く。
「ぼ、僕だって、頑張って走ってるのにぃ……!」
 すばしっこいというのもあるけど、中々追いつけなかったのにはもう一つ理由があった。カラットの行く道行く道が、とにかく普通じゃないんだ。
 上に大きくうねった根っこをのぼっていく。先は折れて崖のようになっていて『ついに追い詰めた!』とポメが思っても、カラットはひょいと飛び降りた。
「あぁもう、なんで飛び降りるのが怖くないのさ!」
 下の家に着地したかと思うと、ひょいひょいと家々を飛び伝って、どんどん先へ行ってしまう。
「あいツ、お前との追いかけっこを楽しんでるなァ」
「はぁ、はぁ……追いかける、僕の身にもなってほしいよ」
 家を飛んで伝っていく……そんな芸当は、ポメにはできはしない。ポメは普通の道から見上げながら、カラットを追いかけていった。
 ときどき足を止めると、カラットはポメの方を見下ろす。なんだかポメのことを、あざ笑っているように見えた。
「こんなこともできないんだって、思われてそう」
「実際そう思ってんだロ」
 チクリ。フォルの言葉も刺さる。とにかく今は、何ごともなく孤児院に送り返さないと。ポメは必死になって、カラットについていこうとした。
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