Illustration by 竹藤狐
 フロッカ峡谷の道は、どこまでも続く。幾重に枝分かれする迷路のような道。
 それでも、出口へと導く道しるべの棒のおかげで、ポメたちの歩みは順調だった。

「ついにトリキリデかー、楽しみだね」
 トリキリデ……ポメにとっては、最近授業で習った町だ。
 挿絵に描かれた、町を包むほどの大きな樹が印象的だった。
 でもその大きさは、挿絵じゃあどれほどのものか分からない。前にお母さんに聞いたこともあったけど
「こ~んなにも、おっきいわよ」と、手をぐんと広げて教えてくれた。

 でもそれじゃあ結局、ポメにとってはどれほど大きいのかは想像もできなかった。
「ふっふ~ん、オイラも楽しみだなぁ」
 ジェコも楽しげに、ふんふんと鼻歌を歌っている。リズミカルに、ぶんぶんとしっぽとお腹を揺らしながら。
「ジェコさんも楽しみなの?」
「トリキリデではま。わざわざ聖都に送る野菜とか育ててるらしいんだ。一体どんな味か……すっごい楽しみさ!」
 じゅるり。よだれをたらすジェコを横目に、ロココはふんと鼻を鳴らした。

「あんなの、大したことないわよ。フツーの野菜を、トリキリデの加護があるからとか言って、テキトーに高く売ってるだけだもの」
「なんだい、やけに詳しいなぁ」
「ま、そうねぇ……」じっと、ロココは前の方を見つめて、ふうと小さくため息をついた。
「伊達に、色んなとこに行ってないものよ」

 そしてそれから、ロココは黙ってしまった。ロココが黙っちゃうと、ジェコやポメも言葉が見つからなかった。ざざぁっと、峡谷を抜ける風の音が聞こえてくる。
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