Illustration by 竹藤狐
 ―――
 
浮船では、決勝戦の準備が整えられていく。三チームが競っていた舞台も今や、ジェコたちのためだけに広々とした調理スペースへと変わっていった。
「すっげぇ……オレたちのためだけの、舞台なんだな」
 振り返ると、ケラケラには大勢の観客。こんなにも沢山のヒトに見られるなんて、今までなかった。人前で演奏するのに馴れているデデも、少し恥ずかしくなった。
「へへん、やる気が出てくるな」
 一方ジェコはと言えば、デデとは正反対。声援を受ければ受けるほど、やる気がぐいぐいとみなぎるのを感じていた。
「いいよな、プレッシャーを感じないのってよぉ」
「ふふん、デデくんだっていつか、こういう舞台に立つのが夢なんだろ。だったら、そのデモンストレーションだと思って、やってみたらいいんじゃないか?」
「ふぅん、デモンストレーション、ねぇ……」
 デデはもう一度、観客たちの方に体を向けた。
 たくさんの視線。それらがすべて、自分たちに向けられている。
『聖地巡礼に選ばれれば、きっとこれくらいの観客を前に、演奏するんだよな……』
 バシバシ。デデは自分のほっぺたをつよく叩いた。ジンジンと痛む中で、目の前の景色がさっきよりもはっきりと見える。
「よっし、料理だってヒトに楽しんでもらうもんだしな。がんばるぞ!」
Back to Top