Illustration by 竹藤狐
 
―僕は、夢を見ていた。そこは僕の知らない、どこかの街。アルメリシアにはないような、大きな建物が並んでいる。
 昼間なのに、日が差し込まない細い道。僕はその先に『お母さんがいる』という確信があった。なんでかは、分からない。だけども僕はぎゅっと何かを握り締めて、走り出した。
 そして僕の奥底にあった"確信"の通り、お母さんがいた。だけども見えた途端に、足元がぐらりと歪んだ。
 石畳なのに、ぬかるむような感触。中々前に進めないもどかしさの中、見えてきたのはある一団の後ろ姿だ。
「お母さん!」
 お母さんは振り返ると、その顔は今にも泣きそうな、哀しさに満ち溢れたようなもの。僕が見たことのない、お母さんの顔だった。
 そしてお母さんは僕に何かを言った。『助けて』かもしれないし、全然違うものかもしれない。僕は手を伸ばす。だけどもその手を掴んで引き摺るのは、僕の後ろからぐんと伸びた、黒い手だった。
 振り返ると、クラヤミが広がっていた。そこには無数の目。
 この光景、僕は覚えてる。僕は必死にクラヤミを、振り払おうとした。でもどんどん、お母さんから離れていく。周りがどんどん暗くなっていって、そして……―
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